ACC診療ハンドブック

解説編

凝固因子製剤の使用法

Last updated: 2016-06-01

 1980年代前半を中心に非加熱凝固因子製剤投与を介して、当時の血友病患者の約3割がHIVに感染した。平成22年時点でも、HIVに感染している血友病や類縁疾患症例は775人確認されている。HIV感染症を診療する医師は血友病成人の急性出血管理についても一定の知識を有していることが望ましい。
 血友病はX連鎖(伴性)劣性遺伝形式をとる出血性疾患で、凝固第Ⅷ因子(血友病A)あるいは第Ⅸ因子(血友病B)の欠乏により内因性凝固障害を生ずる。凝固因子の欠乏の程度により、重症(活性1%未満)、中等症(同1-5%)、軽症(同5%以上)に分類される。主な出血部位は関節内・筋肉内であるが、皮下・粘膜出血や消化管出血、頭蓋内出血を来す場合もある。
 血友病の急性出血では、出血部位や出血の重症度に応じて、必要な凝固因子製剤量を、止血が得られるまで投与する(表1)。必要な凝固因子製剤投与量は以下の式で計算される。
  血友病A:第Ⅷ因子補充量(単位)=体重(kg)×目標因子活性(%)×0.5
  血友病B:第Ⅸ因子補充量(単位)=体重(kg)×目標因子活性(%)
 関節内・筋肉内出血の初期症状は「違和感」であることが多い。腫れ・熱感などの理学所見が出る前に早期に補充を行うことで重症化を避けることができるため、自覚症状を重視して迅速に初期投与を行うべきである。特に進行した血友病性関節症を抱えている患者では再出血を起こしやすいため、十分な期間の製剤補充が必要である。また高度の頭痛を訴える場合、まず100%を目標に凝固因子製剤を投与した後、頭蓋内出血の検索のため頭部CT検査を行う。消化管出血を認めた場合は80-100%を目標に血液製剤を補充し、C型肝炎や門脈圧亢進症の合併も疑い、食道静脈瘤の精査・処置などを検討する。
 動脈穿刺や手術・生検などの観血的処置の際にも、必要な凝固因子をあらかじめ補充し、処置後も必要な補充を行うことにより凝固能を正常化させ、安全に処置を遂行することができる(表2)。一部の血友病症例では、外部から補充した欠損因子に対する抗体(インヒビター)が産生されている場合がある。インヒビター保有患者では凝固因子補充の効果は乏しく、インヒビター力価や出血症状に応じて中和療法やバイパス療法(ノボセブン、ファイバ)を選択する必要がある。インヒビター保有患者の止血ガイドラインも作成されているが、止血困難な場合が多いため、その管理は専門家の手に委ねるべきであろう。

表1 急性出血に対する補充療法

 

表2 手術・処置に対する補充療法

 

表3

ガイドライン

  1. 日本血栓止血学会 インヒビターのない血友病患者の急性出血、処置・手術における凝固因子補充療法のガイドライン 2013年改訂版
  2. 日本血栓止血学会 インヒビター保有先天性血友病患者に対する止血治療ガイドライン 2013年改訂版