ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

HIV関連血小板減少性紫斑病(HIV-ITP)

Last updated: 2016-06-01

病因

 骨髄での血小板無効造血、末梢での血小板破壊の亢進など、複合的要因により発症すると推測されている。骨髄像では古典的血小板減少性紫斑病(ITP)と同様に、巨核球の増加が観察されるのが典型的だが、HIV進行期での発症例ではHIV感染自体による骨髄抑制が加わり正常〜低形成となることもある。
 HIV関連蛋白は血小板と免疫学的にcross-reactionを起こすとされる。とくにgp120/160と血小板表面gpⅡb/Ⅲaはepitopeの相同性があり(Blood.80.1. 1992:162)、抗Ⅲa抗体は血小板を破壊するとされる(Cell.2001. 106.551)。

臨床像

 免疫能が比較的保たれた時期(CD4 300-600/µL)に発症するのが典型的である。軽度の脾腫がしばしばみられる。
 血小板数の低下に応じて点状出血、皮下出血、鼻出血などがみられるが、古典的血小板減少性紫斑病に比べると、消化管出血などの重篤な出血症状はまれである。
 ART開始後に免疫再構築症候群としてHIV-ITPを発症する場合もある。

診断

 各種感染症検査、骨髄検査などで、二次性の要因が除外されてはじめてHIV-ITPの診断が可能となる。他の感染症や悪性腫瘍の合併、薬剤性血球減少(表1)などの除外が特に重要である。
 PA-IgGはHIV-ITP患者の多くで上昇が見られるが、特異性は低く診断的意義は少ない。

表1 HIV感染症患者における二次性血小板減少症の原因

 

治療

①治療:抗HIV療法
 ARTが治療の中心であり、ARTのみで多くの症例で改善を認める。典型的な経過として、血小板の改善は月単位で認められ、血小板数の回復までには数ヶ月程度を要することが一般的である。ただし一部の症例では、免疫再構築症候群としてさらに血球減少が一過性に進行する事もある。

②追加治療(出血症状を認める、または血小板減少が高度の場合):高用量免疫グロブリン製剤(0.4g/kg/day, 4-5days)
 追加治療として、出血を認める場合または血小板減少が高度の場合(3万/µL以下)には、高用量免疫グロブリン製剤(0.4g/kg/day, 4-5days)を用いる。投与後速やかに(多くは2-3日以内)血小板数の回復が得られるが、効果は一過性(〜3週)であり持続しない。重篤な出血症状の予防や観血的処置が必要な場合に対する、ARTによる血小板数回復までの緊急避難的措置として用いる。この場合、血小板数の増加のみを目的とするのではなく、危険な出血を予防することが治療の目的となる。一般的に血小板数が3万/µL以上あれば重篤な出血のリスクは少ないが、追加治療のタイミングは臨床経過から症例毎に判断する。

③抗HIV療法で改善を認めない場合:通常のITP治療に準じる
 ARTで改善を認めない場合は、通常のITP同様に経口ステロイドによる治療が選択肢として考慮されるが、副作用や日和見感染症には注意を要する。高用量デキサメサゾン内服(40mg/day, 4days)に関してはtapering不要のためプレドニゾン内服と比較して副作用が少ないが、HIV感染者では成功例の報告があるもののその評価は定まっていない。
HIV-ITPのその他の治療として、インターフェロン、摘脾が有効な症例もあるが、長期合併症への影響を考慮して判断する。Helicobacter pylori 感染がある場合には、除菌により血小板数増加が認められることがあるため、血小板数にかかわらず治療を試みるべきである。