ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

HIV関連キャッスルマン病
(HIV-associated Multicentric Castleman's Disease)

Last updated: 2018-07-16

はじめに

 HIV患者で見られるHHV-8(human herpesviurs-8)関連疾患としてはカポジ肉腫(KS)の頻度が最も高い。一方で、比較的稀ではあるが、診断の遅れが致死的となりうる極めて重要なHHV-8関連疾患として、多中心性キャッスルマン病(Multicentric Castleman's Disease :MCD)がある。
 MCDは初期には自然寛解、再燃を繰り返すため、積極的に本症の可能性を疑わなければ、診断されずに見逃されてしまい、何度目かの再燃時に一気に病態が悪化すると、わずか数日の経過で多臓器不全にいたり死亡しうる極めて予後不良の疾患である。

病態

 MCDでは腫大リンパ節内でポリクローナルに増殖しているHHV-8感染plasmablastが病態形成に重要な役割を果たしている。活動期にはこのplasmablastからHHV-8由来のvIL-6(viral IL-6)が多量に産生される。vIL-6はヒト体内でhuman IL-6(hIL-6)と同様の生理活性を発揮することが分かっている。産生されたvIL-6は宿主由来のvascular endothelial growth factor (VEGF)の産生を促し、産生されたVEGFはリンパ節の血管内皮からのhIL-6産生を刺激する。このようにvIL-6およびhIL-6を主体とした炎症性サイトカインと、その他の各種サイトカインの誘導によるサイトカインストームがMCDの病態の本質であると考えられている。
 HHV-8はKS、MCDおよび悪性リンパ腫発症と関連しているため、それぞれが重複あるいは経過中に発症するリスクが高い。MCD患者の非ホジキンリンパ腫の発生頻度は、MCDを発症していないHIV患者の15倍高いとする報告もある。

診断

 原因不明の発熱が自然寛解・再燃を繰り返す場合には、本症を積極的に疑う。活動期には血小板減少、CRP高値、低アルブミン血症、貧血を認め、緩解期にはこれらのデータの改善が見られる。特に活動期のCRPの著明高値(>10mg/dL)、血小板減少(<5万/μL)は頻度の高い特徴的な検査データである。
 確定診断は表在リンパ節の生検を行い、病理で多数の形質細胞の浸潤と免疫染色によりこれらの細胞のHHV-8感染を証明する事で行う。血清HHV-8の検出はMCDを示唆する所見であるが、KSの一部でも血清HHV-8は陽性であり、MCDでも緩解期には血清HHV-8は陰転化しうるため診断の根拠としてはならない。
 FDG-PETでは活動期の病勢を反映して病変部への集積がみられ(写真1)、病勢評価に有用とする報告がある。緩解期での検出感度はそれほど高くない。一方、Gaシンチでは活動期でも病変部への集積が全く見られないという報告が複数あり、FDG-PETと合わせて判断することで、本疾患にしばしば併発する悪性リンパ腫(Gaシンチで集積あり)を検出に有用である可能性がある。

写真1:活動期MCDにおけるFDG-PET所見

治療

 現時点でMCDに対する標準治療は確立していないが、すでにRituximabの有効性を示す知見が蓄積しており、コンセンサスを得つつある。
 Rituximabによる寛解導入80例の長期成績も報告1) されており、維持治療なしでの中央値6.9年間の観察期間中の5年生存率は92%であり、5年間のrelapse-free survivalは82%であったとしている。再発例は全例でRituximabによる再治療が有効であった。
 Rituximab治療の問題点は、病勢の強い時には効果が不十分であること、高率に合併しているKS病変がRituximab治療により増悪するリスクが高いことである。
 ACCではMCD増悪期にはliposomal doxorubicinによる治療を1-3クール行い、病勢を一旦落ち着かせてからRituximabを投与している。
 ARTの導入についてはMCDがARTにより増悪する可能性を示唆する報告が多いため、MCDの治療を先行して病勢が落ち着いてから導入するほうが望ましい。

(活動期)

liposomal doxorubicin 20mg/m2 (病勢が落ち着くまで3週間隔で反復)
→その後、緩解期の治療へ

(緩解期)

Rituximab 375mg/m2 (1週間隔で4サイクル投与する)

文献

1) Pria AD, Pinato D, Roe J, et al. Relapse of HHV8-positive multicentric Castleman disease following rituximab-based therapy in HIV-positive patients. Blood. 2017 Apr 13;129(15):2143-2147

参考:HHV-8関連疾患(カポジ肉腫・キャッスルマン病・原発性滲出性リンパ腫)
AIDSに合併するカポジ肉腫等のHHV‐8関連疾患における(PDF:9912KB)
厚生労働科学研究 エイズ対策研究事業「エイズ患者におけるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスが原因となる疾患の発症機構の解明と予防および治療法に関する研究」班(研究代表者:片野晴隆)