ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

カポジ肉腫

疫学と病因

 カポジ肉腫(以下KS)は、HIV感染者に生じる腫瘍性疾患では、悪性リンパ腫に続いて頻度の高い腫瘍である。発症するのはほぼ全例がMSMの患者であるという疫学的な特徴がある。発症にはKSHVとも呼ばれるHHV-8が深く関与し、皮膚を中心としてほぼ全ての臓器に発症する多中心性の腫瘍である。

好発部位と臨床像

 好発部位は皮膚であり、初期には掻痒や疼痛を伴わない紫斑様の皮疹として出現する。進行すると次第に膨瘤して癒合傾向を示すようになり、色調も暗紫色から褐色へと変化する。四肢の病変が進行し、リンパ浮腫を伴うようになると疼痛が出現し、患者のADLを著しく低下させる。皮膚以外では、口腔粘膜(特に硬口蓋や歯肉)、消化管、呼吸器、リンパ節などの発症頻度が高いが、眼瞼結膜や肝臓、心膜、中枢神経などほぼ全ての臓器に発症しうる。内臓病変は皮膚病変を伴わないこともあり、また自覚症状も乏しいことが多い。

診断

 HIV感染が背景にあることが分かれば、肉眼的に診断することも可能であるが、確定診断には病変を生検し病理学的な診断を得る必要がある。組織学的には、紡錘形細胞が増殖し内部に赤血球を含有するスリット状の管腔構造が認められる。いわゆる「肉腫」としての異型性は目立たないことが多く、病理医へKS疑いであることを伝えないと血管腫などと判断されることもある。免疫染色としてD2-40や抗LANA-1抗体が用いられる。画像診断では、Ga67シンチグラフィーで取り込みがないことが、他の炎症性疾患や腫瘍との鑑別に有用である。

病期分類と予後

 1989年にAIDS臨床試験研究グループ(ACTG)が発表した病期分類があるが、その後修正案や他のスコアリングシステムも報告されている。肺病変や他の日和見疾患の合併、CD4低値(<150/mm3 )、高齢(>50歳)は予後不良因子とされる。肺病変以外ではKSが直接予後に影響を与えることは少ない。なお、MCD やPELなど他のHHV-8関連疾患を合併した場合の予後は極めて悪い。

治療

 限局性の皮膚病変や全身性であっても進行が緩徐な皮膚病変であれば、ARTのみで経過を見ることが可能である。内臓病変も初期であればARTのみで対処可能だが、肺病変を有する例や腫瘍量が多い症例、進行が早い症例では全身化学療法の適応となる。治療を要する患者では、リポゾーマルドキソルビシン(Doxil®)20mg/m2を2-3週毎に投与する。投与回数は症例により様々だが、ARTを併用した場合4-6回投与するとARTのみで維持が可能になることが多い。なお、ART導入後に免疫再構築症候群により病変が急速に増大することがあり、特に気道病変を有する症例では気道狭窄を来すことがあるので注意する。

Reference

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Kaposi's sarcoma 写真(皮膚、口腔× 2、消化管、肺)