ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

中枢神経系原発悪性リンパ腫

Last updated: 2015-02-25

病因

 免疫不全の進行により、潜伏感染しているEBVが活性化することが発症に関与すると考えられている。全身性非ホジキンリンパ腫においては、EBVの関与が全症例のうち30-40%程度とされているのに対し、中枢神経系原発悪性リンパ腫ではほぼ全例でEBVが関与していることが知られる。

臨床像

 病変が中枢神経系〜眼に限局しており、進行しても通常は中枢神経系以外へ転移することはない。
 組織型としてはびまん大細胞型B細胞リンパ腫が最多である。
 発症時のCD4数はしばしば<50/µLで、進行した免疫不全例が多く、ARTの確立により、以前に比べ発症頻度は低下傾向にあることが報告されている。
 トキソプラズマ脳症では比較的小さな病変でも意識障害を呈しやすいのに対し、中枢神経系原発悪性リンパ腫はある程度大きな病変でも意識が保たれる傾向にあるのが特徴である。

診断

 CT・MRIで病変の辺縁がリング状に造影されるのが典型的な所見である。同様のパターンはトキソプラズマ脳症でも認められる。トキソプラズマ脳症では病変は多発性で、本症では単発性であることが多いが、例外も多く画像所見での両者の鑑別はしばしば困難である。
 一般的には抗トキソプラズマ治療を1〜3週行い治療的診断を行うことがしばしば行われる。この場合、安易にステロイドや脳浮腫改善薬を併用すると、トキソプラズマ脳症でなくとも臨床効果の改善が得られてしまい、アセスメントを困難とするため、初期はこれらの薬剤を極力併用しないことが重要である。
 髄液EBV-DNAのPCR法による測定は感度80%、特異度は100%近いとされ、髄液細胞診より鋭敏な指標である。また定量値の高さは他疾患との鑑別に有用な可能性がある(J Neurovirol 2002.8.432、J Clin Virol. 2008.42.443)
 核医学検査として、201Tl SPECT、FDG-PETが感染性病変(特にトキソプラズマ脳症)とリンパ腫病変の鑑別に有用であるとする報告もある。
 抗トキソプラズマ治療が無効である場合、中枢神経系原発悪性リンパ腫の確定診断のための脳生検を行う。検査合併症および関連死亡率はそれぞれ8.4、2.9%と報告されている。

治療

 ART確立前は平均生存期間3か月と極めて予後不良の疾患であった。
 現在の標準治療は、放射線による全脳照射とARTの併用療法である。最近わが国で行われた多施設合同調査においては、3年生存率64%と報告され、30Gy以上の全脳照射の実施と、診断時の良好なPS(<2)が予後良好因子とされた(Eur J Hematol.2010.84.499)。ただし、全脳照射の晩期合併症として白質脳症による痴呆症状の発生が高頻度に起こる(上記報告では36%)点が問題である。照射線量を極力少なくする工夫(〜20Gy)や下記の化学療法による治療が試みられるようになっているが、現時点で十分な知見はまだない。
 化学療法はこれまで予後改善効果を示せていなかったが、非HIV感染例では高用量のMethotrexateとCytarabine、放射線照射の併用で生存期間の改善を得たと報告され、RituximabやAutologous Stem Cell Transplantationを組み合わせることも議論されつつある(Lancet.2009.374.1512)。HIV感染例での知見の集積が待たれている。
 全脳照射後ARTを導入し完全寛解を得た当施設の1例を以下に示す。