ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

悪性リンパ腫

Last updated: 2015-02-25

病因

 HIV感染者では、非ホジキンリンパ腫(NHL)の頻度が約200倍高くなることが知られており、ART以前の時代にはHIV感染者の約8%に発症するという報告もあった。ARTが広く行われるようになり多くの日和見疾患の予後は改善されたが、悪性リンパ腫は、未だ致命率の高いエイズ関連合併症のひとつである。
 AIDS関連悪性リンパ腫の発症には、多くの因子が関係しているが、そのひとつとしてEBウイルス感染が挙げられる。

臨床像

 組織学的には大部分がB cell typeで、diffuse large cell typeが最も多く、diffuse immunoblastic type、Burkitt's type、Primary effusion lymphoma(PEL)が、そのほとんどを占める。
 AIDS関連悪性リンパ腫では、節外性病変の頻度が高いことが重要である。節外性病変としては、消化管病変、特に胃、骨髄、中枢神経の頻度が高い。

診断

 確定診断は組織診断による。病期診断(表1)のために、病歴聴取と身体所見、末梢血球検査、生化学・免疫検査、骨髄検査(生検、穿刺)、髄液検査、全身CT、PETまたはGaシンチグラフィーを行う。節外性病変の評価として、消化管内視鏡検査や頭部MRIによる全身精査が必要である。特に中枢神経浸潤病変は全体の約30%(自験例)と高頻度に認められる。化学療法の実施にあたっては、腎機能、肝機能、心・肺機能の評価、合併する日和見疾患、特にHBV感染の評価が重要である。

表1 病期分類:Ann Arbor分類

病期分類:Ann Arbor分類Cotswold修正案

 

治療

 エイズ関連リンパ腫に対する標準的レジメンは確立されていないが、HIV陰性の場合の有効治療をベースにレジメンが選択される。近年、非HIVのCD20陽性B細胞性リンパ腫に対しては、rituximabを加えたR-CHOP療法が標準治療になりつつある。R-CHOPはエイズ関連リンパ腫においても完全寛解率(50-70%)と良好な治療成績が報告されているが、まだ標準治療とはなっていない。rituximab投与によって日和見疾患のリスクが高まるため、特にCD4数の低値例で入念な日和見疾患対策が重要である。2010年現在、日本国内で、「未治療のHIV関連CD20陽性非ホジキンリンパ腫に対するR-CHOP療法の有用性に関する多施設共同臨床第Ⅱ相試験」が実施されている(表2)。厚生労働省研究班より「HIV関連悪性リンパ腫治療の手引き ver2.0」が出ているので参考にされたい1)
 ARTについては、多くの研究によって予後改善効果が証明されており、化学療法と積極的に併用すべきである。ただし、骨髄抑制のあるAZTの使用は避け、特にプロテアーゼ阻害薬との薬物相互作用に十分な注意が必要である。HBVとの重複感染時には、TDF/FTCまたはTDF/3TCを用いる。具体的にはABC/3TCあるいはTDF/FTC、TDF/3TCにFPV(unboosted)かRALを併用した3剤治療が行われる事が多い。
 最大の予後不良因子はCD4低値である。また、何らかの理由でARTが実施できない場合も、予後不良である。International Prognostic Index(表3)は、AIDS関連悪性リンパ腫においても、予後の評価に有用とされている。

表2 R-CHOP 投薬スケジュール*

 

表3 International Prognostic Index

参考文献

  1. HIV関連悪性リンパ腫治療の手引き ver2.0, 日本エイズ学会誌 15(1), 46-57, 2013.