ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

クリプトスポリジウム下痢症

Last updated: 2016-06-01

病原体

 胞子虫類コクシジウム目に属する原虫CryptosporidiumC.parvum 他)により生じる。健常人便中oocyst排泄率は、先進国で1〜3%、開発途上国で10%程度。ART以前の米国ではAIDS患者の3〜4%が感染していたが、ART以降減少している。人獣共通感染症であり家畜、特に子牛の感染率は非常に高く重要な感染源である。

病態・臨床像

 Cryptosporidium は腸粘膜上皮細胞の微絨毛内で増殖し、感染性oocystが糞便に多数排出される。感染は汚染された生水、生野菜、手指などを介するoocystの経口摂取により起こるが、糞便-経口感染等のヒト-ヒト感染も存在する。Oocystは湿潤な環境では半年間生存可能で、各種消毒液・塩素消毒では死滅しない。殺滅には乾燥あるいは70℃以上の加熱が必要である。感染力は非常に強く10〜100個の摂取で感染し発症する。本邦でも水道水を介した集団下痢症の報告がある。特に免疫低下者では生水・湖・幼い動物との接触に注意が必要である。
 クリプトスポリジウム症は感染者の90%が発症する(潜伏期は7〜10日)。水様下痢が多く、血便はない。腹痛、嘔気、嘔吐、軽度の発熱(36〜57%)を伴うこともある。健常者の下痢は1日10回以上に及ぶ場合もあるが、2週間程度で自然軽快する。しかし、HIV感染者特に低CD4症例では重症・慢性化することが知られている。腸管外病変は非常に稀であるが、胆道感染(胆管炎や膵炎)の他、肺炎なども報告されている。CD4数との関連では、CD4数200/µL以上では自然軽快、CD4数100/µL未満では慢性化し腸外症状、CD4数50/µL未満では重症化する可能性がある。

診断

 診断は糞便からのoocystの検出による。oocystは他の原虫と比べて小さく(直径約5µm)、通常の原虫・虫卵検査法では判別が困難であり、ショ糖浮遊法や抗酸染色法などが必要であるため、臨床的に本疾患を疑った場合には検査室にその旨を連絡する必要がある。蛍光免疫法等の感度の高い検査(図)もあるが、日本では体外診断法としては認可されていない。

図1 分干渉顕微鏡

直径約5 µm のoocyst が検出される 

図2 蛍光抗体染色法 

治療

 確立した治療法はない。HIV患者では、抗HIV療法未導入の患者に発症することが多い。このため、抗HIV療法による免疫能回復が最も期待できる治療法である。Paromomycin, Azithromycin等の薬剤が部分的に有効であったとする報告がある。また、Nitazoxanideが有効(67%)との報告があり、本邦では下記の熱帯病治療研究班から入手可能である。
処方例
 1)Paromomycin(1g分2)+Azithromycin(600mg分1)を4週間後、paromomycin単独で維持(保険適用外)
 2)Azithromycin(600mg分1)14日間(保険適用外)。
 3)Nitazoxanide(2g分2)免疫正常者では3日間、免疫不全者では14日間
 Nitazaxanideは免疫不全者を対象に「我が国における熱帯病・寄生虫症の最適な診断治療体制の構築」に関する研究班より入手可能である。http://trop-parasit.jp/