ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

帯状疱疹

Last updated: 2016-04-28

病原体

 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染によって水痘を発症する。感染後のVZVは三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏感染する。VZVは免疫機能の低下に伴い再活性化され特定の神経支配領域の皮膚に水疱を生じ帯状疱疹を発症する。
 CD4が200/µL以下になると年間発症率が増加するが、CD4の値に関わらず発症し、HIV感染を疑う契機となることが多い。特に既往歴ない若い患者が帯状疱疹を発症した際は、HIVのスクリーニングが推奨される。

臨床像

 皮疹が出現する数日前から発症部位の神経支配領域に疼痛が出現する。その後、身体片側の三叉神経、脊髄神経支配領域に一致して発赤し、丘疹となり水疱が形成される。水疱は膿疱、びらん、痂皮と経過をたどり瘢痕化する。皮疹出現後7日程度は水疱が新しく出現してくるため1分節から連続するいくつかの分節の神経支配領域に新旧の皮疹が混在する。
 三叉神経第1枝、第2枝を侵す帯状疱疹では進行性網膜外壊死、急性網膜壊死といった眼合併症を発症することがあり急速に失明する可能性がある。前額部や鼻背上部などに病変が見られる場合には眼科医への紹介が必要である。進行性網膜外壊死はCD4が50/µL以下で発症しやすいとされるが、急性網膜壊死はCD4が比較的高くても発症する。髄膜炎、横断性脊髄炎、脳炎を発症した報告もある。10-15%のHIV感染例が帯状疱疹治療後に帯状疱疹後神経痛を発症するとされる。

診断

 特徴的な皮膚病変から、診断は比較的容易である。他のヘルペス性疾患との鑑別を要する場合には、水疱内容のウイルス分離やPCRによる鑑別を考慮する。髄膜炎、脊髄炎、脳炎(皮疹が少なかったり、全くない場合もある)を診断するためには、症状からVZVを積極的に疑って髄液のPCR検査を提出する必要がある。

治療

 抗VZV薬は腎排泄性であり、CCr ≦50-60mL/minでは用量調整(減量)が必要である。詳細は添付文書等を参照すること。
 皮疹が限局している場合は、外来で内服治療が可能である。
   バルトレックス 3000mg分3 10日間
   ファムビル 1500mg分3 10日間

 三叉神経、2分節以上の拡がりを呈する播種性帯状疱疹や、内臓病変も疑われる場合などの重症例では、入院下の点滴治療が推奨される。播種性帯状疱疹では空気感染対策が必要である。米国CDCの感染対策に関するガイドラインでは「HIV感染者の帯状疱疹は軽症例も含め、全例が空気感染対策の適応」としているが、当科では播種性病変でなければCD4<200/µLの場合に空気感染対策を適応している。
  acyclovir 10mg/kg×3 臨床的に改善が明らかとなるまで
 無効の場合
  foscarnet 90mg/kg×2 7-14日(保険適用外)
 acyclovir耐性ウイルスも報告されており治療経過には注意が必要である。