ACC診療ハンドブック

日和見疾患の診断・治療

ヒトパピローマウイルス感染症

Last updated: 2015-02-25

病原体

 ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus; 以下HPV)は接触感染(主に性行為)によって感染伝播する。DNAタイピングによって、子宮頚癌、肛門癌などの悪性腫瘍の原因となるhigh risk型(HPV16, 18他)と、尖圭コンジロームのような良性腫瘍の原因となるlow risk型(HPV6, 11他)に分けられる。子宮頚癌の90%以上は本ウイルス感染が関連しており、なかでも16型と18型は子宮頚癌の60-70%の原因となっていると考えられている。

臨床像

 HPVが関与する疾患で、特に頻度が高いのは、尖圭コンジロームと子宮頚癌である。尖圭コンジロームは、肉眼的には、有茎性でカリフラワー状の発育を示し、性器周辺や口腔内(写真1)などに好発する良性腫瘍である。同じく良性の病変として、ボーエン様丘疹症がある。褐色の5mm程度の小隆起性病変が多発性に認められる。
 子宮頚癌の予後に、HIV感染がどのように関与しているかは不明な点が多いが、一般に、HIVとHPVの混合感染では、HPV持続感染率が高まり(図1)、HPV関連腫瘍の発症率を高めるといわれている。また、CD4数が低いほどHPV関連腫瘍の発生率が高まるといわれている。また、男性HIV患者の肛門癌の頻度は、一般に比べて約2倍と報告されており、肛門癌・陰茎癌についても留意する必要がある。

写真1 口腔内HPV 関連腫瘍

 

図1 国立国際医療研究センターにおける女性患者の子宮頚部HPV-PCR 陽性率と子宮頚部細胞診(2002 年)

診断

  診断のgolden standardは、腫瘍組織の病理学的検査である。得られた腫瘍組織からHPVを検出することも可能だが、一般的には行われない。子宮頚癌は、早期発見・早期治療がkeyであることから、女性HIV患者においては、6-12ヶ月毎に子宮頚癌検診(Pap smear)を行う必要がある。当院では、頚管粘液のHPV-PCRおよびDNAタイピング検査を実施し、リスクを評価して、個々の症例に適した検診間隔を設定している。high risk型HPV検出例や、進行したAIDS患者の場合、より頻回にフォローを行っている。

治療

 尖圭コンジロームに対しては、冷凍療法(液体窒素)などで、機械的に取り除く方法が一般的である。薬物療法としては、Imiquimod(商品名:ベセルナクリーム5%)がある。再発率が高いため、根気よく治療する必要がある。子宮頚癌に対しては、細胞診でclassⅢ以上の症例に対して生検を実施し、生検で異型性が認められた場合には円錐切除が行われる。以後は状況に応じて治療法が選択される。ARTが、これらHPV関連腫瘍の予後を改善させるかどうかは、明らかになっていない。
 2006年に米国でHPVワクチンの臨床応用が開始され、2009年に日本でも16型と18型に対するHPVワクチンが発売されたが、HIV患者における効果や安全性の情報は限られており、具体的な運用方法については決まっていない。