診断と治療ハンドブック

参考図表

薬剤耐性検査

Last updated: 2018-07-16

 抗HIV療法の失敗の原因のひとつに、HIVの薬剤耐性獲得がある。適切なタイミングで行われた薬剤耐性検査は、以後の治療方針決定に有用である。HIV-1薬剤耐性検査は2006年に保険収載された(抗HIV治療の選択および再選択の目的で行った場合に、3月に1回を限度として算定可能)。

薬剤耐性検査のタイミング

 薬剤耐性検査の適切なタイミングとして、「HIV薬剤耐性検査ガイドライン Ver 5」*では、以下の臨床状況を推奨している。
 *薬剤耐性HIVインフォメーションセンターのウェブサイトからPDF版をダウンロード可能
1. HIV感染の新規診断時
2. 抗HIV療法の開始時
3. 抗HIV療法開始後に十分な治療効果が認められない時(ウイルス学的失敗時) (抗HIV療法を行っているにもかかわらず良好なHIV抑制が得られない時)
4. 治療中に薬剤耐性HIVの出現が疑われた時
5. ウイルス学的失敗以外の理由で抗HIV薬を変更する時 (HIV抑制が良好な場合は検査不能の場合がある)
6. 抗HIV療法の中断後と再開時
7. HIV感染妊婦において抗HIV療法(母子感染予防)を行う時
 近年では治療歴のない例においても薬剤耐性HIVが報告されており、未治療症例においては初診から抗HIV療法を開始するまでの間に検査を行うことが望ましい。特に急性感染期の耐性検査は、のちの薬剤選択に非常に有用である。 なお、抗HIV薬を中止して長時間が経過すると、野生型ウイルスの旺盛な増殖に伴い耐性クローンの検出が難しくなる場合がある。ウイルス学的失敗時の耐性検査においては、耐性化が疑われる抗HIV薬を中止する前の検体採取が望ましい。

薬剤耐性検査の依頼先

 HIV-1薬剤耐性検査はいくつかの臨床検査会社に依頼することが可能である。保険適応外で耐性検査が必要な場合には、担当医より薬剤耐性インフォメーションセンターに依頼することもできる(2018年7月現在)。
薬剤耐性HIVインフォメーションセンター(外部サイトにリンクします)

薬剤耐性検査結果の解釈

 薬剤耐性結果の判定に有用な公的ウェブサイトとして、以下のものが広く知られている。ただしいずれの評価アルゴリズムもサブタイプBを主な対象として作られており、異なるサブタイプにおける知見の蓄積が待たれるところである。

Stanford HIV-dB program(外部サイトにリンクします)
米国Stanford大学が運営する薬剤耐性判定ウェブサイト。耐性変異リスト(あるいはシークエンスデータ)を入力すると、耐性判定結果が出力される。

Agence Nationale de Recherche sur le SIDA(ANRS)(外部サイトにリンクします)
The French ANRS (National Agency for AIDS Research) による薬剤耐性関連変異の一覧表

IAS-USA(外部サイトにリンクします)
薬剤耐性関連変異の一覧を定期的に掲載している。

検体採取時に投与されていない抗HIV薬に対する薬剤耐性、あるいは検体中の全HIVのごく一部のみを占めるHIVクローンの耐性は、薬剤耐性検査結果に正確に反映されない可能性がある。ウイルス学的失敗時の治療薬選択にあたっては、直前の薬剤耐性検査結果に加え、過去の薬剤投与歴(該当薬剤投与中のHIV抑制状況)や耐性検査提出時点での服薬状況(服薬アドヒアランス)も考慮に入れ、慎重に判断しなければならない。